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2009年6月9日火曜日




 
ニュース 速報 YOMIURI ONLINE(読売新聞)
写真の構図って?

  
 

絵画では主題がひきたつように画面構成や配置を考えて、画面のバランスを整えていきます。

写真の場合も基本的にはまったく同じこと。

撮影者が表現したい主題を強調するためには、主題と脇役を上手く配置する必要があります。

絵画の場合は限られたキャンバスの範囲内で構図を組み立てて自己表現するのに対して、写真の場合は作者が心に感じた部分をカメラのファインダーで切り取る(フレーミングする)ことで自己表現するわけですから、写真における構図とは「フレーミング」ということになります。

ここで勘違いして欲しくないのは「トリミング」。

写真の世界には画像を切る作業として「フレーミング」の他に「トリミング」という作業がありますが、これは予め撮影された画像の形を整えたりプリントされた写真の矩形を整形するための手法なので、フレーミングとは違うということを理解しておきましょう。

通常はカメラのファインダーの規格された矩形内で表現できない場合に使われる手法なのです。 
  
 

写真と絵画の一番の違いはどこでしょう?

絵画では作者の必要とするものだけがキャンバスに書き加えられていきます。このため主題の表現を妨げる不必要なものは描きません。

写真の場合は、カメラを向けて写したのもは全て写ってしまいます。

このため撮影者が的確な意思を持ってフレーミングし、不必要な物を画面から排除していく作業が必要になるのです。

これが「絵は足し算の芸術」、「写真は引き算の芸術」といわれ、いかにフレーミングが重要な意味を持っているかということを意味しています。

では実際にどのようにフレーミングがあるのか、基本的な構図作りを考えていきましょう。 
 

●三分割法 
 

もともと視覚的に「安定感が損なわれる」または「面白味がない」という理由で、避けるのが望ましい構図という物があります。

たとえば「風景写真を撮るときには、水平線を画面の中央に写さない」「被写体を画面の中央に写し込まない」など。

前者は水平線が画面の中央を横切ることで画面が上下真っ二つに分断されてしまうために、空を写したいのか地上を写したいのか主題がハッキリしないという理由。また後者は日の丸構図と呼ばれ、どんな物を撮っても動きが感じられないパスポート写真のようになってしまうことから、いずれも嫌われる構図です。

皆さんは子供のころに教えてもらった黄金分割という言葉を覚えていらっしゃるでしょうか?

「1:1.618」という比率はそのバランスの美しさで黄金比と呼ばれ、何世紀にもわたり人々の美的感覚を魅了してきました。ミケランジェロやレオナルド・ダ・ビンチの絵、ミロのヴィーナスやエジプトのピラミッドにもこの画面分割が見られます。

美しさの比率である黄金比で長さを分けることを黄金分割といい、いろいろな分野で取り入れられているのですが、写真を撮る上でそれほど厳密な画面分割を考えていては、貴重なシャッターチャンスに出会ってもシャッターが切れないことになってしまいます。

そこでもっと簡単な画面安定の比率、三分割法を採用してみましょう。これならば目分量でも瞬時にフレーミングできるはず。

縦横を1/3ずつ区切ると交差する部分が4ヶ所できます。仮にA・B・C・D と印た部分がポイントになります。

三分割法とはこの4ヶ所に主題が来るように写すと画面がまとまって見えるというもので、頭の隅に置いておくと構図が決まらない時に利用できるのではないでしょうか。

●シンメトリー 
 


シンメトリーというのは、左右または上下に対称形になるような被写体配置を言います。

この場合、必ずしも同じ形の物が向かい合う必要はありません。

画面を二分する被写体それぞれが強調し合うようなトリミングをするのがコツです。

ですから、似通った物を並べながら左右の違った部分で、わざとバランスを崩すのも面白いものです。


 

●三角配置 
 


画面の中に三角形ができるような構図です。

この構図は画面に安定感を与える配置で、被写体の形よって上が尖った三角形になるか、左右に尖った三角形ができるかはケースバイケースです。

完全な三角形という必要はありませんが、風景の中の一部分を三角形に見立てて撮影します。

●縦配置・横配置 
 


画面を見たときに、縦の線に沿って目線が流れるように誘導する構図です。

一般的に縦向きの線配置は男性的な力強さ、またこれに対して横向きの線配置は女性的な静かさを表現しやすいとされています。

この写真は、平面的に見えるようにして形の面白さを表現したものです。

●曲線と対角線の構図 
 


曲線を配置した写真は、視覚的に被写体の柔らかさや優雅さを表現する効果があります。

穏やかな瀬戸内の時間が緩やかに流れている様子を曲線で表現したものです。

これに対して直線的な被写体で画面を構成した場合、もっと激しい動きや被写体の動きの力強さを表現するのに役立ちます。

●被写体を見る角度の違いよる構図 
 


最後は被写体を見る角度の違いによる、構図の変化を見てもらいます。

同じ観覧車でも見るアングルによって、構図をまとまるためのフレーミングがかなり違ってくるのがよく分かると思います。

どういったアングルから撮影するのかということとフレーミングの方法は、撮影者それぞれが持っている被写体への思い入れによって異なり、その個人差から個性のある傑作が生まれてくるものです。

と言っても写真の場合は絵画とは違いシャッターチャンスを逃すわけにはいきません。また被写体の動きによってベストなフレーミングが変化していくのは言うまでもありません。

被写体に対して自然にベストポジションに立って、速やかに「アングル」「フレーミング」を決められるよう訓練をすると良いでしょう。